長沼 豊(著/文)
高校・大学時代からボランティア活動に関わり、ボランティアとボランティア学習の分野を切り開いた、長沼豊。自身の生い立ちから、ボランティアとの出会い、教育の道に進むきっかけ、学会を立ち上げ、学習院大学の教育学科の開設を仕掛けてきた、著者の半生を語る一冊。
2021年6月15日 刊行/四六判 224ページ
定価1,500円+税
ISBN 978-4-904933-17-6
まえがき
人とのつながりに悩み苦しんだ
2020年、見えない敵が私たちの社会を襲ってきました。小学生時代にテレビでお笑いのツボを教わった志村けんさんが、あっという間に他界されたのは、かなりショッキングな出来事でした。「だいじょうぶだあ」ではなかったのですから。
困難な状況は、いまだに続いています。
人が生きているうちに出会う困難にはさまざまなものがあります。人々が共通して出会うものもあれば、個人的なものもあります。
共通と言えば、いま50代後半の私は、生きている間に80年に一度の大恐慌、1000年に一度の津波被害、そして100年に一度のパンデミックを目にすることになってしまいました。
大恐慌は1930年の世界大恐慌と2008年のリーマンショック、津波被害は869年の貞観地震と2011年の東北地方太平洋沖地震、パンデミックは1918年のスペインかぜと2019年に発見された新型コロナウィルスによる感染症です。1995年の阪神・淡路大震災もボランティア関係者には忘れることのできない出来事です。歴史は繰り返すのでしょうか。
では個人的な出来事はどうでしょうか。
私は教育やボランティアの世界で生きてきました。両方の分野に共通しているのは「人とのつながり」です。そう言うと、ライフワークにしているのだから得意なことだと思われるかもしれませんが、実は全く逆なのです。
人とのつながりでは悩みが絶えません。小さい頃は金魚の糞のように人の後について行動していました。おとなが怖くて、犬が怖くて、水泳が怖くておびえている少年でした。えっ、そうなのと思ったあなた。ぜひ本書をさらに読み進めてください。
なぜなら本書では、私が受けた教育と、自ら飛び込んだボランティアの世界が私にどのような影響を与えたのか、特に進路に悩んだり人間関係に苦しんだりした私が、どのように人とつながって、悩みや苦しみを克服していったのかについて語っているからです。いやいや、克服というよりも、今でも悩み苦しんでいるのですが。
ですから本書は進路に悩んでいる高校生や就活生、私と同じ教育やボランティアの世界で悩みながらも頑張っている皆さん、人と人のつながりによって何かを変えよう、改革しようと考えている皆さんに読んでいただければ幸せです。
本書を通じて読者と私がつながる瞬間があるかもしれないと思うと楽しい気持ちになります。もし私の死後に本書を手にする読者がいるとすれば、時代を超えてつながったことになります。
なかなか困難な時代ですが、人と人とがつながる楽しさを笑顔で語り合いながら、時代を一歩前に進めていきましょう。「だいじょうぶだあ」と言えるように。
2021年3月 筆者記す
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